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名古屋高等裁判所 昭和55年(ネ)256号 判決 1981年7月17日

第一審原告(第二五六号事件控訴人、第二六八号事件被控訴人) 日本ハードボード工業株式会社

右代表者代表取締役 濱本晴市

右訴訟代理人弁護士 福岡宗也

小澤幹雄

後藤昌弘

第一審被告(第二六八号事件控訴人、第二五六号事件被控訴人) 東洋テックス株式会社

右代表者代表取締役 塚田昭義

右訴訟代理人弁護士 近石勤

楠瀬輝夫

武田安紀彦

主文

一  第二五六号事件につき

(一)  原判決を次のとおり変更する。

(二)  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(一)記載の標章を原判決添付商品目録(一)記載の商品及び包装箱、宣伝用カタログに使用し、またはこれを使用した右商品の製造、販売または頒布をしてはならない。

(三)  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(二)、(三)記載の各標章を、原判決添付商品目録(二)記載の商品及びその包装箱、宣伝用カタログに使用し、またはこれらを使用した右商品の製造、販売または頒布をしてはならない。

(四)  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(一)記載の標章を使用した原判決添付商品目録(一)記載の商品、その包装箱、宣伝用カタログを廃棄せよ。

(五)  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(二)、(三)記載の各標章を使用した原判決添付商品目録(二)、(三)記載の商品、その包装箱、宣伝用カタログを廃棄せよ。

(六)  第一審被告は、第一審原告に対し、七七二万九三二八円及びこれに対する昭和五三年一〇月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(七)  第一審原告のその余の請求を棄却する。

(八)  訴訟費用は第一、二審を通じこれを三分し、その一を第一審原告の負担とし、その余を第一審被告の負担とする。

(九)  この判決は第二ないし第六項に限り仮に執行することができる。

二  第二六八号事件につき

(一)  本件控訴を棄却する。

(二)  控訴費用は第一審被告の負担とする。

事実

一(申立)

一  第二五六号事件につき

(一)  第一審原告

1  原判決を次のとおり変更する。

2  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(一)記載の標章を原判決添付商品目録(一)記載の商品及びそのダンボール箱、広告、包装、シール、宣伝用カタログ、注文書等の印刷物に使用し、またはこれを使用した右商品の製造、販売または頒布をしてはならない。

3  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(二)、(三)記載の各標章を原判決添付目録(二)記載の商品及びそのダンボール箱、広告、包装、シール、宣伝用カタログ、注文書等の印刷物に使用し、またはこれを使用した右商品を製造、販売または頒布をしてはならない。

4  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(一)記載の標章を使用した原判決添付商品目録(一)記載の商品、ダンボール箱、広告、包装、シール、宣伝用カタログ及び注文書を廃棄せよ。(本項当審において追加)

5  第一審被告は、原判決添付イ号標章目録(二)、(三)記載の各標章を使用した原判決添付商品目録(二)記載の商品、ダンボール箱、広告、包装、シール、宣伝用カタログ及び注文書を廃棄せよ。(本項当審において追加)

6  第一審被告は第一審原告に対し、四三八一万七一七四円及びこれに対する昭和五三年一〇月一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

7  訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

8  2ないし6項につき仮執行宣言の申立。

(二)  第一審被告

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は第一審原告の負担とする。

二  第二六八号事件につき

(一)  第一審被告

1  原判決中第一審被告敗訴部分を取消す。

2  第一審原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。

(二)  第一審原告

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は第一審被告の負担とする。

(主張及び証拠関係)

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実摘示と同一(ただし、原判決九枚目初行に「公正に競争秩序」とあるのを「公正な競争秩序」と訂正する。)であるから、これを引用する。

一  第一審原告の主張

(一)  かりに第一審被告が本件各商品について、本件イ号各標章の使用を廃止し、将来もその使用の意図がないとしても、これは第一審原告が第一審被告に対し、昭和五三年四月一七日本件各商品について本件イ号各標章使用禁止等の仮処分決定を得、同年四月二一日にその執行を了した結果であるから、その本案事件である本件訴訟において、これを顧慮すべきではない。

(二)  第一審被告は過失によって本件各商標権を侵害し、その侵害行為により利益(原判決請求原因五項記載)を受けている。そして商標法三八条一項の規定は、商標権侵害行為があれば権利者に当然損害が発生するものとし、その損害額を侵害者の取得した利益と推定する趣旨である。したがって、第一審原告は右侵害行為によって現に損害を受けたことの主張立証を要しないで、前記第一審被告の利益に相当する額を損害賠償として請求し得る。

二  第一審被告の主張

(一)  かりに第一審被告の本件イ号各標章の使用が本件各商標権を侵害する行為にあたるとしても、前記(原判決被告の反論二、三記載)のように本件各商標は現実の取引において本来の出所表示機能を有しないものであり、商標自体にネームバリュウがあってその為に第一審原告の商品の販売を促進しているという状況にはなかったものであるから、実質的には右各商標権を侵害していない。第一審被告が本件イ号各標章を使用して本件各商品を販売して得た利益は、もっぱら第一審被告の商品の品質、価格、技術、意匠、販売政策、信用等によるものである。このような場合に商標法三八条一項を適用し、第一審被告の本件各商品の販売によって得た利益をもって直ちに第一審原告が受けた損害と推定することは不合理であり、経験則に反する。したがって、右条項にいう利益とは、厳格に本件イ号各標章使用によってのみ得た利益と解すべきである。また、右利益をもって全体としてみた侵害行為がもたらした利益の意に解しても、右侵害行為と利益との間に因果関係が存しないと認められる部分まで、これを第一審原告の受けた損害とすべき理由はない。以上の観点からすれば、第一審被告は本件各商標を使用することによってなんらの利益を受けておらず、したがって第一審原告の受けた損害と推定されるべきものは存しない。

(二)  かりに第一審被告が第一審原告に対し、本件各商標の使用に対し、通常受けるべき金銭の額に相当する額を賠償する義務があるとしても、本件各商標は前項に述べたようなものであって、その使用により格別の営業上の利益をあげられるものとはいえないから、対価を支払ってまで使用するものはなく、したがって右金額は極めて少額に評価すべきである。

三  証拠《省略》

理由

一  第一審原告は繊維板、建築材料、木工製品の製造・販売等を業とする会社であり、第一審被告は建築資材の製造、販売等を業とする会社であること、第一審原告が登録商標である本件各商標の商標権者であることは当事者間に争いがない。

二  《証拠省略》を総合すると、第一審被告は、本件(一)の商品(木質繊維板製化粧天井材、兼吸音板)を製造、販売するにあたり、昭和五二年一〇月一日頃から昭和五三年九月末日頃までの間、右商品の柄名を表示するものとして、その包装箱にイ号(一)の標章「花紋」を付し、本件(二)の商品(天然木製額縁状鍔付装飾天井材)を製造、販売するにあたり、右商品の柄名を表示するものとして、昭和五一年四月一日頃から昭和五三年四月末日頃までの間、イ号(二)の標章「オリオン」を、昭和五一年一二月一日頃から昭和五三年八月末日頃までの間イ号(三)の標章「カペラ」をそれぞれの包装箱に付し、また、本件(一)及び(二)の各商品の販売宣伝用カタログにイ号(一)ないし(三)の各標章を記載して右各標章を使用したことが認められる。《証拠判断省略》

しかして、イ号(一)ないし(三)の各標章と本件(一)ないし(三)の各商標を対比すると、いずれもが文字標章であり、その外観、称呼及び観念において、それぞれ同一であることが明らかであるところ、本件(一)の商品は本件(一)の商標の指定商品中の繊維板及び天井用音響吸収板に、本件(二)の商品は、本件(二)、(三)の各商標の指定商品中の木材にそれぞれ該当することが明らかであるから、前記第一審被告の前記イ号(一)ないし(三)の各商標の使用は、これに対応する本件各商標権に対する侵害行為にあたるというべきである。

しかるところ第一審被告は、第一審被告のイ号各標章の使用を総合的に観察すれば本件各商標との同一性ないし類似性を欠くと主張し(原判決事実摘示被告の反論一)また、本件各商標は現実の取引界において第一審原告商品の出所表示機能を有していないから、実質的に商標権の侵害はないと主張する(同上反論二)が、いずれも採用できないものであり、その理由は原判決一三枚目裏三行目から一五枚目表七行目までの説示と同一であるから、これを引用する。

三  そうとすれば第一審被告は、本件イ号各標章を本件各商品の包装箱に付し及び宣伝用カタログに記載して使用することを中止する義務があり、右各標章を使用した包装箱、宣伝用カタログを廃棄する義務がある。

しかるところ、《証拠省略》を併せ考えれば、第一審被告はイ号(一)標章については昭和五三年一〇月一日頃以降、イ号(二)標章については同年五月一日頃以降、イ号(三)標章については同年九月一日頃以降現在までそれぞれ使用を止めていることが認められる。しかし、《証拠省略》によれば、第一審原告は第一審被告を債務者とし昭和五三年四月一七日名古屋地方裁判所において、本件商標権を被保全権利として本件各商品に対し本件イ号各標章の使用を禁止し、かつ、これを使用した包装箱、宣伝用カタログ等の占有を解き執行官に保管を命ずる旨の仮処分決定を得、同決定は同年四月一七日第一審被告に送達され、同月二一日執行され、執行官はイ号各標章を使用した包装箱入の本件各商品(イ号(一)の標章を使用したもの四〇三九個、イ号(二)の標章を使用したもの四〇個、イ号(三)の標章を使用したもの一個)の第一審被告の占有を解いて自己の保管に移したことが認められる。したがって、第一審被告が現在本件各商標権の侵害行為を止めているのは、右仮処分決定の執行の結果による仮のものというべきである。もっとも、前記第一審被告代表者の供述によると第一審被告は、昭和五三年八月頃から、イ号各標章を使用して販売してきた本件各商品にそれぞれ別個の標章を使用して販売するにいたったものと認められ、右事実によれば第一審被告は右仮処分決定の執行後任意に侵害行為を絶止するにいたったようにみえるが、他方《証拠省略》によれば、第一審被告は右仮処分執行後の同年七月一五日頃その代理店に対しイ号(一)標章を使用した本件(一)の商品の特販セールを同年九月一五日まで実施することを宣伝通知したこと、したがって、第一審被告は前記仮処分決定の執行により執行官の保管に付されたもののほかにイ号各標章を使用した本件各商品、包装箱及び宣伝用カタログを所有しているものと認められること、第一審被告と訴外大建工業株式会社との間の本件と類似の紛争において第一審被告は右訴外会社を債権者とする商標権侵害差止の仮処分決定を受け、その異議事件の係属中在庫係争商品の処分を強行したことがあること、第一審被告代表者は本件仮処分決定後も本件イ号各標章の使用は本件各商標権を侵害するものではないと確信している旨言明していること等の事実が認められ、右事実に照せば第一審被告は、本件侵害行為の差止及び前記侵害物件の廃棄を命じられない限り、少くとも同物件を使用して将来侵害行為を行うおそれなしとはいいがたい。したがって第一審被告が現在侵害行為を止めていること及び本件商品に他の標章を使用していること等の事情は、第一審原告の本件侵害行為差止請求権を失わせるものではない。

四  第一審被告の右本件各商標権の侵害行為については、第一審被告に過失があったものと推定されるところ、右推定を覆し無過失であったことを認めるに足る証拠はないから、第一審被告は第一審原告に対し右侵害によって受けた損害を賠償する義務がある。そして、《証拠省略》を総合すると次の各事実を認定でき(る。)《証拠判断省略》

(一)  本件各商品を含む建築物内装用木質天井材の大手メーカーは、第一審原・被告及び訴外大建工業株式会社の三社であって、本件各商品である天井材の取引は、主として右各メーカーが取引系列の下にある特約店や代理店に販売し、右特約店や代理店は最終的な需要者である施主の意向を受けた工務店や大工に販売するという形態でなされている。もっとも、右特約店や代理店は必ずしも前記大手メーカー一社の商品のみを取扱うとはかぎらず、右各社及び他の中小メーカーの商品も取扱っているものもある。

(二)  イ号(一)の標章が使用された本件(一)の商品は、装飾用天井材であって、チップを主原料として原板を作り、これに加工塗布等して仕上げるものであり、イ号(二)、(三)の標章が使用された本件(二)の商品は、装飾用天井中心材(中心にシャンデリヤを下げ、天井の中央を飾るもの)であって、素材である木材を加工し、組立て、塗装、布張り、金具付け等して仕上げるものであるが、いずれも装飾用であるから第一審被告独自の模様、図柄を作定し各商品に独自の特色を与えている。

(三)  右大手三社は、その製造販売する天井材等の種類が多く、しかもその各種のものがさらに多様な図柄、模様を有する商品にわけられているため、商品特定の必要上、柄名(愛称)を使用しており、第一審原告は天井材の柄名として本件(一)、(二)の各商標を使用し、第一審被告は同じくイ号(一)ないし(三)の各標章を使用してきたものである。そして天井材等の購買者は通常宣伝用カタログ又は見本品等により価格、品質、図柄、模様を知り、メーカー名或いは、メーカー名を冠した品名と柄名を示し、時には柄名のみを示して、口頭、電話又は注文書等により注文して取引が行われている。なお、第一審原告は約九八〇件の登録商標を有しているが、現に使用しているものは一割程度であって、その余(本件(三)の商標を含む。)は使用しておらず、いわゆるストック商標となっている。訴外大建工業株式会社も同様に七〇〇ないし八〇〇件の登録商標を有し、その一部のみを現に使用している。一方、第一審被告は同じ目的で約一〇〇の標章を使用しているが、すべて未登録のものである。

(四)  第一審被告の本件イ号各標章の具体的な使用状況は次のとおりである。

イ号(一)標章については、本件(一)の商品の包装箱(ダンボール)の一部の面に活字体(以下同じ。)で「花紋」と中型(他の文字との比較においていう。以下同じ。)の文字を記載し、それに「東洋吸音板」と小型の文字及び「ほんざね」と大型の文字を併記している。

イ号(二)、(三)の各標章については、本件(二)の商品の包装箱(ダンボール)の一部の面に「オリオン」、「カペラ」と大型の文字を記載し、それに「トーヨーセンターピース」と小型の文字及び「東洋テックス株式会社」と中型の文字を併記している。

また本件(一)、(二)の商品の宣伝用カタログには、右各商品の写真を掲げ、本件(一)商品について「花紋」と小型の文字を付し、それに「東洋ほんざね吸音板」と大型の文字及び「東洋テックス株式会社」と中型の文字を併記し、本件(二)商品については、「オリオン」、「カペラ」と大型の文字を記載し、それに「トーヨーセンターピース」と大型の文字及び「東洋テックス株式会社」と中型の文字を併記して使用している。

(五)  一方、第一審原告は、本件(一)、(二)の商品と同種のものである天井材を販売するについて、その柄名を表示するものとして、その包装箱(ダンボール)の一部の面に本件一の商標の平仮名表示である「かもん」及び本件二の商標の「オリオン」をそれぞれ小型の文字をもって記載し、それに原判決添付(四)記載のマークを併せ表示している。

右認定事実によれば、第一審原告は指定商品に本件一及び二の商標を現に使用中その侵害を受けたものであり、第一審被告の商品との間に誤認混同を生ずる恐れがないということはできないのであるから、右侵害により第一審原告において営業上損害を受けたものと推認すべきであって、第一審原告の右損害額は商標法三八条一項により、第一審被告が本件イ号標章(一)及び(二)の使用によって受けた利益に相当する額と推定される。

しかして、第一審被告が別紙記載の各イ号標章を使用し、販売商品欄の商品を、販売期間欄の間、販売数量欄記載のとおり販売したことは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、それぞれの平均単価、総出荷金額は同表記載のとおりであり、本件(一)の商品の販売純利益は一坪当り三〇八円、その総額は四六六万五五八四円、本件(二)の商品の販売純利益は一個当り四〇六三円、その総額は三二七八万八四一〇円となることが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

これに対し第一審被告は、右販売純利益中には専ら第一審被告の商品の品質、価格、技術、意匠、販売政策、信用等により得られたものが存するので、この部分を控除して損害を算定すべきであると主張するところ、前認定に係る第一審被告の天井材等の製造販売業界における地位、メーカーから消費者にいたる商品流通の状況、本件各商標及びイ号各標章の使用の態様、本件各商品の製造方法、販売数量、販売価格及び純利益額等諸般の情況を勘案すれば、前記第一審被告の純利益のうち八割は第一審被告の商品の品質、その技術及びその他の経営努力によって取得されたものと認めてこれを控除すべく、結局第一審被告は第一審原告に対し前記純利益三二七八万八四一〇円の二割に相当する七四九万〇七九八円を損害として賠償する義務があるというべきである。

次に、本件三の商標権の侵害による損害について考えるに、第一審原告は同商標を使用していなかったものであるから、特段の事情のないかぎり商標法三八条二項を適用し同商標の使用に対し通常受けるべき金額をもって第一審原告の受けた損害額をすべく、またそれで足りると解すべきところ右特段の事情を認めるに足る証拠はない。そこで右金額について検討するに、《証拠省略》中には、通常登録商標の実施料相当額は当該商品販売額の二ないし五パーセントであるとする部分があるが、前認定に係る第一審原、被告の天井材等の製造販売業界における地位、右商品の流通の状況、イ号(三)の標章を使用した本件(二)の商品の平均単価、総出荷金額、販売純利益額(前掲証拠によると一個当り四〇〇二円、その総額は六三六万三一八〇円と認められる。)、本件三の商標は第一審原告においていわゆるストック商標として保有し、商品識別のためのいわゆる愛称として使用さるべきものであったこと、同業大手メーカーの訴外大建工業株式会社も同一の目的で多数のストック商標を保有していること、右のような事情から本件天井材等の業界では対価を支払ってまで他人の登録商標を実施した事例が認められないこと等の諸点を勘案すると、右二ないし五パーセントの率を採用することは相当でなく、本件三の商標の実施料相当額としては、右商標を使用した本件(二)の商品の総出荷額の一パーセントにあたる二三万八五三〇円とするのを相当とする。

よって、第一審被告は第一審原告に対し、本件各商標に対する侵害行為によって与えた損害賠償として合計七七二万九三二八円及びこれに対する右侵害行為の後である昭和五三年一〇月一日から支払済にいたるまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

五  以上の次第で、第一審原告の本訴差止請求は前記三説示の限度で正当として認容すべきであり、また損害賠償請求は前項記載の限度で正当として認容すべきであるが、その余の差止請求及び損害賠償請求はいずれも失当として棄却すべきである。よって、第一審原告の本件控訴は右の限度で理由があるから右と結論を一部異にする原判決を変更することとし、また第一審被告の本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民訴法九六条、九二条、八九条を、仮執行宣言については同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮本聖司 裁判官 浅野達男 寺本栄一)

<以下省略>

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